自己決定が幸福の鍵

この3年ほど毎年5月に私は日本へ一時帰国をしています。

2年前は弟の結婚披露宴のため、1年前は父が大怪我をして介護施設へ入所することになったためでした。

1年前父はずっと痛みを訴え続け、面会できたとしてもわずか15分ほど。

様々な制約の中で切ない想いをすることの連続でした。

なんとか滞在期間中に全ての手続きを終え、特別養護老人ホームへの入所を見届け、後ろ髪を引かれる思いで私はサンディエゴへ戻りました。

あれから瞬く間に1年が経ち、特養ホームでの生活にも慣れた父の表情は明るくなり、感謝の言葉を口にすることが増えました。

そして「必ずもう一度自分の足で歩く」と宣言した通り、車椅子から立ち上がり、ゆっくりと短い距離ではあるものの、自分の足で立ち上がり歩けるまでに回復しました。

88歳、驚きの回復です。

車椅子を自分で操作し、バックで進むと早く動けることや、リハビリで歩く様子を私に見せてくれました。

父が無邪気な子どものように「自分でできる」ことを私にアピールする様子を微笑ましく見守りました。

正直私は1年前「父はもう自力で立ち上がり歩くことは難しいのでは」と諦めていました。張り切ってリハビリをしようとすることに対して、私と弟は「次に転んでさらなる大怪我をしたら、今度こそ寝たきりになってしまうのでは」と不安や心配の気持ちが大きかったのです。

しかし、私たち子どもの心配をよそに、父は自分の足で再び歩くと決意し、自らの努力で見事に達成しました。

父は10歳の頃に八幡大空襲で家を焼け出されています。

焼夷弾の雨が降り注ぐ中を逃げ、何度も死の恐怖と隣り合わせの経験をしています。

戦時中の悲惨な状態を生き延びた世代だからこその強さを、私は度々父から感じるのです。どんな苦境や試練があっても、いつも明るく前向きに捉えようとする父の姿から、今回も勇気をもらいました。

自分で決めたことだから、努力ができる。

成し遂げることができる。

自己決定権を持つことが「幸せ」の鍵だと感じた嬉しい出来事でした。

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